ベトナム語ってどんな言葉?日本人にとって習得は簡単?それとも難しい?

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最近街でベトナム人を見かけたり、ベトナム製の製品が増えてきたり、日本とベトナムの関わりが急増していることを感じませんか?技能実習生の受け入れや、日本企業のベトナム進出など日本とベトナムの関係は良好で、来日するベトナム人も年々増えています。

でも日本にいるとベトナム語に触れる機会はなかなかありませんよね。もしかしてどのような文字なのかすら見たことがない人も多いかもしれません。ベトナム語が一体どのような言語なのか、ベトナム語の歴史から、日本語との接点、習得の難易度まで細かく分析していきます。

ベトナム語の歴史

ベトナムは現在のベトナムに至るまで、中国やフランスの支配を受けたり、戦争に巻き込まれたりと複雑な歴史をたどっています。

ベトナム語にまつわる歴史を理解して、現在のベトナム語の成り立ちを理解していきましょう。

昔は漢字が使われていた

ベトナムは紀元前より1000年以上、中国の支配を受けていました。そのためベトナム語の公用語は長い間、漢字が使われていました。これを漢越語と言います。

今でもベトナムに存在する多くの寺や神社などの歴史的建造物の多くには、漢字が刻まれています。また、ベトナムの古典や歴史的な記録の多くは、漢文で書かれているそうです。

現在ベトナムでは一般的には漢字はもう使われていませんが、ベトナム語の7割の言葉は漢字で表すことができると言われています。

漢字とベトナムの真ん中「chữ nôm(チュノム)」とは?

15世紀ごろに開発された、漢字を応用したベトナム独自の文字を「chữ nôm(チュノム)」といいます。日本で漢字と、漢字を崩した文字である平仮名を使っているように、ベトナムでも漢字と「chữ nôm(チュノム)」を混ぜて使っている時期が存在したのです。

しかし「chữ nôm(チュノム)」は漢字の知識が必要で非常に難しい言語だったためあまり広がらず、フランス統治時代が始まると同時に衰退し使われなくなってしまいました。

現代のベトナム語「Quốc ngữ(クォックグー)」はフランス人の贈り物?

今ベトナムで使われているベトナム語は「Quốc ngữ(クォックグー)」というもので、ベトナム語で「国語」という意味になります。「Quốc ngữ(クォックグー)」はベトナム語の読みにアルファベットをあてはめたもので、17世紀にヨーロッパの宣教師が作り出したと言われています。

フランス統治時代にこの「Quốc ngữ(クォックグー)」の普及が推進され、ベトナム人の間で広く使われるようになりました。ベトナムの文明化の象徴ともいわれる「Quốc ngữクォックグー」は、フランス人からの贈り物とも呼ばれているほどです。

1945年にベトナムの公用語が漢字ではなく、「Quốc ngữ(クォックグー)」が正式に採用され、漢字やチュノムは一般用語としては使われなくなりました。

ベトナム語の特徴とは?

複雑な歴史をたどってきたベトナムで、現在使われている公用語は、「Quốc ngữ(クォックグー)」のベトナム語です。ではこの現代のベトナム語の特徴はどのようなものになるのでしょうか。

ベトナム語の代表的な特徴をあげていきます。

文法は英語に似ている

ベトナム語の文法の基本は、英語と同じ「SVO型」です。

日本語:私はフォーを食べる。
英語:I eat pho.
ベトナム語:Tôi ăn phở.

日本語とは異なり、主語、動詞、目的語という順番になります。

しかし英語と違い文法的に日本語ににているところは、主語がなくても通じるところです。

日本語:この辞書を持っていますか?
英語:Do you have this dictionary?
ベトナム語:Có từ điển này không?

英語とベトナム語が大きく異なるところは、語形の変化がないところです。英語は主語や時制、数量などによって英語はsがついたりedがついたり、動詞が活用したりしますが、ベトナム語ではそのようなことが一切ありません。変化したり活用させたりする代わりに、補足する言葉が追加されるというようなイメージです。

日本人にとって英語が難しいと思われる点は、この言葉や動詞の活用もあるのではないでしょうか。ベトナム語はひとつの言葉を覚えてしまえば変化させる必要がないので、その点においては英語よりもかなり楽な言語であると言えるでしょう。

Nguyet

Tôi ăn phở

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Nguyet

Có từ điển này không

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単語は中国語、フランス語の影響がある

前述のようにベトナムは中国や、フランスの支配を受けていた時代があるため、中国語やフランス語をそのまま使っている言葉が多くあります。

漢字の読みに関しては、現在の中国語よりもむしろ日本語に近い印象を受けます。

フランス語をそのまま使っている言葉をいくつかご紹介します。

ベトナム語 フランス語 日本語
phô mai

フォー マイ

fromage

フロマージュ

チーズ
cà phê

カー フェー

café

カフェ

カフェ
giăm bông

ジャン ボン

jambon

ジャンボン

ハム
ga

ガー

gare

ガール

Nguyet

Phô mai

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Nguyet

Cà phê

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Nguyet

Dăm bông

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Nguyet

Ga

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母音がたくさんあって、発音が難しい

ベトナム語を学んでいる人がまず最初にあげるベトナム語の特徴は、その発音の難しさです。

ベトナム語には母音が12種類、声調が6種類あり、それだけでもすでに発音を困難にしていますが、そのほかにも綴りによって日本語には存在しない発音が多数あります。

日本語はイントネーションで差をつけることはありますが、正しい「あ」の発音がどのようなものかを気にする人はあまりいませんよね。「お」に近い「あ」も「え」に近い「あ」も同じ「あ」の仲間になりますが、ベトナム語ではそこは細かく区別されます。

おまけにベトナム人は発音に対してとってもシビアです。きちんと正しい発音をしなければ、なかなか分かってもらえません。

ベトナム語にも方言がある?

ベトナムの公用語はベトナム語ですが、北部と南部では発音や使う言葉が違っていたりと、同じベトナム人でもベトナム語が分かり合えないことがあるほど異なります。標準語は首都ハノイがある北部の言葉となり、日本で購入するベトナム語のテキストも北部のベトナム語が中心です。

ベトナムは日本のように縦に細長い国です。北部は首都ハノイを中心としており、南部は経済都市であるホーチミンが中心です。ハノイからホーチミンには飛行機で2時間ほどかかり、頻繁に行き来ができる距離ではありません。

このことから北部と南部ではそれぞれに方言があるほか、ベトナム人のキャラクターも異なります。ベトナムの北部が日本の関東、南部が関西というふうに考えるとイメージしやすいかもしれませんね。

日本人がベトナム語を習得するのが簡単な理由

一説によると、日本人がベトナム語を習得するのは簡単であると言われています。ベトナムに旅行で行ったり、仕事で赴任したり、ベトナム人の友達や同僚ができたのであれば、ぜひベトナム語で話してみましょう。

ベトナム語が日本人にとって簡単である理由をあげていきます。

普通のアルファベットを使うので読みやすい

ベトナム語は英語と同じアルファベットを使っています。ただし同じアルファベットに母音記号や声調をつけて音を区別しているので、実際に使用するアルファベットの数は多くなります。しかしベースは普通のアルファベットです。

このことにより英語教育を受けてきている日本人にとって、ベトナム語は馴染みやすい言語であるといえるでしょう。正確な発音ではないとしても、どのように読むのかの大体の察しがつきます。

同じ東南アジアの国であるタイやカンボジアではそれぞれタイ語、クメール語を使用しています。この二つの言語はアルファベットではなく独自の文字を使っているため、まずそこから覚えなくてはいけません。

ベースが英語と同じアルファベットを使用しているというのは、日本人がベトナム語を学ぶ上で、大きな助けとなるでしょう。

漢字で表せる言葉が7割

ベトナム語のルーツが漢字にあるため、ベトナム語の言葉の7割は漢字で表せると言われています。

本来は中国からの影響を受けているので中国語に近いはずなのですが、同じ中国からの影響を受け現在も漢字を使用している日本語に近い言葉の方が、むしろたくさん存在します。

日本語とは少し意味が異なったり、発音が違うものもありますが、ベトナム語の中に漢越語を発見できれば、単語を覚えるのがとても楽しくなります。

漢字で表せて、かつ日本語に近い発音を持っているベトナム語をいくつかご紹介します。

ベトナム語 読み方 漢字と意味(追加の意味)
ý kiến イーキエン 意見
chú ý チュー イー 注意
kết hôn ケッ ホン 結婚
chuẩn bị チュアン ビ 準備
y phục イーフック 衣服
kiểm tra キエム チャー 検査
đại sứ quán ダイ スー クアン 大使館
đại học ダイ ホック 大学
kiến trúc キエン チュック 建築
kết quả ケッ クゥア 結果
Nguyet

Ý kiến

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Nguyet

Chú ý

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Nguyet

Kết hôn

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Nguyet

Chuẩn bị

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Nguyet

Y phục

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Nguyet

Kiểm tra

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Nguyet

Đại sứ quán

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Nguyet

Đại học

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Nguyet

Kiến trúc

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Nguyet

Kết quả

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文法のルールが厳しくない

ベトナム語の決まった文法というのはありますが、話し言葉においてはとてもフレキシブルで、ルールが厳しくありません。

それぞれの単語の変化もありませんし、時制もとくに使わなくても問題ありません。時には前置詞も必要なかったりと、とくに話し言葉においては文法がとてもゆるいのです。

正しく話さないといけないという想いが強くてなかなか声に出せない傾向がある日本人にとって、文法の規則が厳しくないというのはトライしやすい理由となるかもしれません。

日本人がベトナム語を習得するのが難しい理由

ベトナム語が日本人にとって親しみやすく、チャレンジしやすい言語であるという説とは逆に、日本人がベトナム語を習得するのは難しいという説もあります。

その代表的な理由を見ていきましょう。

母音が多い!なんとその数12種類

ベトナム語は母音が多く、12種類あります。日本語の母音が5種類なので倍以上です。そしてその中には日本では区別しないような発音まで細かく分かれています。

ベトナム語の母音12種類

母音 読み方 ポイントとなるイメージ
a アー 日本語のアと近い
ă 伸ばさない、弾くような感じ
â オの口でア オに近いア
e くちを上下に広げてエー 日本語のエと近い
ê くちを左右に広げてエー 日本語のエよりこもった感じ
イ、イー 日本語のイに近い
y イ、イー 日本語のイに近い
o 大きなくちでオー アにも少し近い
ô 唇をすぼめてオー 日本語のオに近い
ơ アの口でオー アとオの間の発音
u ウー 日本語のウに近い
ư イの口でウー イとウの間の発音

aだけで3種類、eで2種類、i、yあわせて2種類、oで3種類、uで2種類となっています。それぞれに1種類ずつしか区別しない日本語と比べ、緻密な違いを表現したり聞き分けたりしなければならないベトナム語は、とても難しい言語であると言われています。

Nguyet

a

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Nguyet

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Nguyet

â

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Nguyet

e

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Nguyet

ê

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発音が難しい!声調が6種類

母音が12種類あることに加え、ベトナム語では声調が6種類もあります。声調は単語それぞれの声調記号がついているので、単語を見て読むことは難しくありません。しかし、どの言葉にどの声調がついていたかをすべて正確に覚えることが非常に困難なのです。

なぜそんなに困難なのかは、次の項目の内容が大きく関係します。

ベトナム語の声調6種類

 

声調の記号 読み方 ポイントとなるイメージ
a アー フラットなアー、少し伸ばす
á アー⤴️ ゆっくり最後が上がる
à アー 下げるのではなく、最初から低い。後ろにくる文字より低く発音するイメージ
ア〜ア 行って戻る感じ

クエッションマークの上の部分が声調の記号だが、まさにそのイメージの声調

ã アアッ⤴️ 短く切って上げる、伸ばさない
アッ 短く切る

 

Nguyet

a

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Nguyet

á

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Nguyet

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Nguyet

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Nguyet

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同じ綴りで違う意味が無限大

母音12種類と声調6種類は複雑に絡み合っています。そして、さらにベトナム語を難しくしている理由が、同じ綴りなのに母音や声調が少しずつ違うせいで、全く意味が異なる言葉が無限大にあることです。

具体的には下記のようになります。

単語 意味
thang はしご
tháng
thắng 勝つ、見せびらかす、ブレーキをかける
thằng 目下につける言葉
thẳng まっすぐに、一気に
thặng 余分に
thăng シャープ、昇進させる

同じ「thang」という綴りでも、母音と声調によってこんなにもバリエーションが広がります。綴りだけを覚えていても母音や声調がどれだったかを思い出せない現象がよく発生してしまいます。

さらに言えば、thắngは、同じ綴り、同じ母音、同じ声調にも関わらず色々な意味を持っています。

このように見た目は似ているのに、異なる意味を持つ単語がたくさん存在することに、段々うんざりしてくるのです。発音の次にぶち当たる壁です。

これは単語で覚えるのではなく、ベトナム人の発音を聞いたりまねたりして耳で慣れるしかありません。勉強を続けていくと、逆に自分の発音から声調や母音を予想することができるようになります。

関連記事:ベトナム語は発音が命?ネイティブの音声をもとに練習しよう!

Nguyet

thang

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Nguyet

tháng

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Nguyet

thắng

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Nguyet

Thằng

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Nguyet

Thẳng

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Nguyet

Thặng

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Nguyet

Thăng

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まとめ

ベトナム語は日本語と同じ漢字がルーツです。しかしその後のフランス統治の影響で、アルファベットを使った独自のベトナム語ができあがったという歴史があります。

母音の多さや発音の難しさでベトナム語が難しいと言われる一方で、実は日本人にとってベトナム語は馴染み深い言葉もたくさん登場してくる、親しみやすい言語のひとつであるといえるでしょう。

また文法のルールもそこまで厳しくなく、単語が変化や活用しなことも英語などに比べて楽だと言える理由です。

ベトナムへ行く、もしくはベトナム人の友達や同僚ができたのであれば、ベトナムを深く理解するために、ベトナム語のことを少しでも知っておくとベトナム人がきっと喜んでくれるでしょう。

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