ベトナムの銀行は、日本にいると知る機会がほぼありませんよね。しかしベトナムに足を一歩踏み入れると都市部を中心にたくさんの銀行が立ち並び、その店先に掲示してある金利の高さに驚くことでしょう。
日本では近年見かけないような、定期預金での高い水準の金利がベトナムでは続いています。この高い金利の秘密とはなんなのでしょう。またいつまで続くのか、そしてこの金利の利益にあずかるためにはどのようにすればよいのかを本記事で探っていきます。
ベトナムの金利が高い理由
ベトナムが日本に比べて驚異的に金利が高いのはなぜなのでしょうか?まずはその理由を掘り下げていきましょう。
経済成長率が高い
ベトナムの金利が高いのは、その経済成長の高さが理由です。日本の高度成長期と似ているとも言われているベトナムの経済成長は今勢いがあり、右肩上がりが続いています。それに伴い金利も高い水準をキープしています。
2019年実質GDP成長率は6%以上
ベトナムの2018年のGDP成長率は7.1%とここ10年で最高の値となりました。そして2019年も6%以上、これからもしばらくは高水準の経済成長率が続くだろうと予想されています。
国民の平均年齢はなんと31歳、若い人が多く元気な国であるベトナムは、米中貿易摩擦の利益を享受している影響もあり、これからも世界中から目が離せない国の一つです。
経済成長はいつまで続く?
PWCの予想によれば、ベトナムは少なくとも2050年までは、平均5%前後の経済成長率が続くとみられています。
このことによりこの先30年くらいは高い水準の金利が保たれることとなります。しかしベトナムでは実は近年すでに平均年齢が上がりつつあり、少子高齢化も進みつつあるとも言われています。
ベトナムの経済動向や情勢をしっかり見据えながら、投資を行っていくようにしましょう。
ベトナムの銀行の種類と金利の傾向
ベトナムのハノイやホーチミンなどの都市部に足を踏み入れると、意外なほど銀行が多く立ち並んでいることに驚かれるかもしれません。
ベトナムの銀行は大きく分けて3種類あります。それぞれの銀行の特徴と、金利の傾向を見ていきましょう。
国営銀行
ベトナムが統一された後、元々ベトナムには国営の銀行が一つあるだけでした。しかし市場経済を取り入れる「ドイモイ政策」を採用後にこの国営銀行を4つに分けました。それらが現在の国営銀行と呼ばれる銀行です。具体的には下記の4行となります。
- Agribank
- Vietcombank
- VietinBank
- BIDV
Agribank以外の銀行は、民間銀行というとらえ方もありますが、現在もベトナム政府が大株主となっているため国営銀行としています。ベトナム各地でATMも含め一番よく見かける銀行で、ベトナムの銀行のBIG4と言えるでしょう。
ちなみに日本の銀行もそれぞれに出資しており、みずほ銀行がVietcombank、三菱UFJ銀行がVietinBankへ出資を行っています。BIDVも各日本の銀行から出向者が多く働いているようです。
各行の長期定期預金の金利
定期預金1年金利 | 定期預金2年金利 | 定期預金3年金利 | |
Agribank | 6.80% | 6.80% | 設定なし |
Vietcombank | 6.80% | 6.80% | 6.80% |
VietinBank | 6.80% | 6.80% | 6.80% |
BIDV | 6.80% | 6.80% | 6.80% |
(2019年12月時点)
Agribankでは2年までしか設定がありませんが、他行においては3年以上の長期預金もあります。しかし金利はどこの銀行も12ヶ月を超えると6.8%となりそれ以上は期間が長くても変わりません。
各銀行の預入金額などの条件によって、金利は前後するので最新の情報は各銀行に問い合わせるようにしてください。
民間銀行
下記がベトナムの代表的な民間銀行とその金利になります。規模は国営銀行には劣りますが、上場している銀行も多く今後ますます成長していくことが見込まれます。
定期預金1年金利 | 定期預金2年金利 | 定期預金3年金利 | |
SCB | 7.5% | 7.75% | 7.75% |
Sacombank | 6.9% | 7.3% | 7.4% |
MB | 7.4% | 7.6% | 7.4% |
ACB | 7.3% | 7.8% | 7.8% |
SHB | 7.1% | 7.4% | 7.5% |
VP Bank | 7.4% | 7.9% | 7.9% |
Techcombank | 6.6% | 6.7% | 6.7% |
Eximbank | 7.6% | 8.4% | 8.4% |
HDBank | 7.3% | 7.0% | 7.0% |
Lien Viet Post Bank | 6.9% | 7.3% | 7.4% |
(2019年12月時点)
国営銀行に比べ軒並み金利は高くなっています。銀行によっては8%を超えるところもあります。
各銀行の預入金額などの条件によって、金利は前後するので最新の情報は各銀行に問い合わせるようにしてください。
日系の銀行もある?
ベトナムでは日系の銀行を始め外資の銀行も充実しています。ベトナムに進出している日系の銀行は下記のとおりです。
- みずほ銀行
- 三菱UFJ銀行
- 三井住友銀行
日系以外にもCitibank(アメリカ)やShinhan Bank(韓国)、HSBC(香港)など他の外資系銀行も数多く見かけます。
ベトナムで口座を作る方法
ではここからは実際にベトナムで口座を作る方法を具体的に見ていきましょう。まずは口座を作らなければ、定期預金でお金を預けて利子を受け取ることができません。
外国人が口座を作る条件
外国人がベトナムで口座を作るためには、下記の条件が必要となります。
- パスポート
- 12ヶ月以上の滞在許可証
以前は非居住や1ヶ月などの短期の観光ビザを持っている外国人でも口座が作れたようですが、2019年7月の中央銀行からの通達により、規制が厳しくなりました。
これによって短期滞在資格しか持っていない外国人は口座を作ることができなくなりました。口座を作ることができなければ、もちろん定期預金を作ることもできません。
定期預金で金利を受け取るには?
同じく2019年7月の中央銀行からの通達によれば、外国人が定期預金を行うには下記の条件が適用されることとなりました。
- 6ヶ月以上のベトナム在留資格
- 定期預金の期間は滞在許可の期間に限る
つまり、ベトナムで労働許可証を取得して働いている人もしくは永住権を持っている人などしかベトナムで口座を開き、定期預金を作ることができません。
なお、この通達以降銀行によっては外国人に対してはネットバンクの優遇金利なども適用されなくなっているようです。
外国人への規制が厳しくなった理由とは?
外国人への規制が厳しくなった理由の一つは、経済成長を支える海外からの投資を預金から株へ移行させたいという国の強い意志があると考えられます。
このように外国人への規制強化あるいや規制緩和はベトナム政府によって何の前触れもなくある日突然行われてしまうことが多々あるため、ベトナムへの投資には細心の注意が必要です。
ベトナムで金利生活は可能か?
この先も定期預金の高金利が続くベトナムにおいて、ある程度の資産があればベトナムで金利で生活できるのでは?と考える人も少なくないでしょう。
日本で貯めたお金をベトナムの銀行で定期預金し、金利で生活することは果たして可能なのでしょうか。
高金利が続けば可能
理論的には高金利が続けば、ある程度の資金を投入すればベトナムで金利で生活することは可能です。物価が安いベトナムでは生活費は月5万円もあれば十分です。ただしどこまで生活の質を保つかによって住居なども変わってくるため、投資金額と利子と生活レベルのバランスを考えなければなりません。
また金利は経済成長の勢いがなだらかになれば下がってきますし、20~30年後には頭打ちになることが予想されます。永遠にベトナムで金利で暮らすことは不可能でしょう。ある程度の期間をもって資本投入のシフトチェンジが必要となるはずです。
長期滞在許可が必要
上記のように最近の制度の変更により、外国人が口座を持ち定期預金の利子の恩恵にあずかるためには、12ヶ月以上の滞在許可が必要です。これが外国人のセミリタイア生活のネックとなります。
12ヶ月以上の滞在許可を得るためには、その期間以上の労働許可証もしくはそれなりのビザが必要となってきます。ベトナムで長期在留資格を得るのはなかなか至難の業です。労働許可証を得るということは、働くということですから、セミリタイヤという感じではなくなってしまうかもしれません。
ちなみに永住権はベトナム人と結婚すれば得られます。ベトナム人と結婚をして定期預金を行うということはできるかもしれませんね。
急に制度が変わるリスクに注意
ベトナムは共産党一党体制で国の方針によってすべてのことが急激に突然変わることがあります。2019年7月の中央銀行からの通達のように、政府の意向によっていつどのように外国人への規制が厳しくなるかは分かりません。
高金利の裏にはこのようなリスクもあるため、ベトナムへすべての資産をつぎ込むのではなく、一部を投資し注意深く見守ることをおすすめします。
まとめ
日本ではほぼゼロに近い金利が続く中、ベトナムの6~8%という定期預金の高金利は驚くばかりです。その理由はやはりベトナムの経済成長の勢いにあります。GDP成長率は過去最高を維持し続け、この先30年ほどはこの高い経済成長の水準が続くともいわれています。
この高い金利を知るとベトナムで定期預金を作り、この高金利の利益にあずかりたいという人も少なからずいるでしょう。しかしベトナムでは外国人が口座を作ることへの規制が厳しくなってしまいました。
これまでのように資金を投入し、観光ビザで短期間ベトナムに在住するというようなセミリタイヤ生活はどうやら難しそうです。まずは長期滞在する資格やビザを手に入れることが必要となります。
またベトナムは共産党一党体制の国の力が強く、政府の意向によって制度は急激にどんどん変わっていきます。今は規制が厳しい状況ですが、今後いつ規制緩和になるか、もしくは規制強化になるかは誰にもわかりません。
以上のことからベトナムに全財産をつぎ込むのは少しリスクが高いのかもしれません。できれば一部をベトナムの定期預金へ投資しながら、注意深く経過観察していくことをおすすめします。
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