欧米諸国でムーンケーキとして知られる月餅も中国を中心としてアジア全体で食べられています。もちろんベトナムにも月餅は存在しているのです。
そんな月餅について、ベトナムの月餅はどんなタイミングで食べられ、本場中国とどのように違うとかと言ったこと、それにベトナム月餅のニューウェーブについても紹介していきます。
ベトナムや中国で食べられている月餅とはどんな意味のお菓子?
月餅は、アジアで広く食べられている季節もののお菓子です。ベトナムでは、「月餅(バイン・チュン・トゥ:Bánh Trung Thu)」と呼ばれ、中国同様に特別な時期のお菓子として食べられています。そんな月餅とはどんなものなのか、出される時期はどういった時期なのかについてこの項目で紹介し、まとめました。
月餅とはどんなものか?
ムーンケーキとも呼ばれる月餅ですが、一般的に甘いフィリング(菓子パンやサンドイッチ、ケーキなどにつめる具材)を小麦の記事で包んだお菓子です。餅という字がついていますが、イメージ的には日本の栗まんじゅうやおみやげ物でよく目にする洋風まんじゅうのような外見をしています。アジア諸国の文化に詳しい方であれば、アジアン・ケーキと言えば連想しやすいかもしれません。月餅はアジア諸国で食べられていますが、満月を連想する丸い形をしたものがほとんどで、ベトナムでもその基本形となってます。
日常的にお菓子として食べられるのではなく、季節もののお菓子として、一年のうち決められた期間にだけ作られるものです。決められた時期にのみ作られるので、ベトナムでも店頭で月餅を見かける時季節を感じることができる風物とも言えます。
どういった時期に出されるのか?
ベトナムに関わらず、世界的に月餅を食べる時期、出される時期は中秋節です。中秋節は、紀元前770年~221年頃に中国から起源したベトナムや日本を含んだアジア全体に伝わる行事になります。
時期としては旧暦8月、ちょうど農家の収穫時期に当たることから、収穫後の一休みとして行われ始め今もアジア全体で行われているイベントです。9月中旬にあたり、日本では中秋の名月と呼ばれる時期と一致します。
ベトナムでは、中国と同様に大きな行事として知られており、日本のお盆に相当するイベントです。つまり、お正月と同様に、家族全員が集まれる貴重なものとなっています。そんなおめでたい時期にベトナムでも作られているのが月餅なのです。
ベトナムの月餅はどんなものか?気になるニューウェーブは?
ベトナムの月餅は、基本的にフィリングを包んだお菓子という点で、本場中国の月餅と一致しています。しかし、それ以外については本場中国とは、やや異なったものとなっており、さらにニューウェーブの月餅に至っては、全く別のお菓子となっているのが特徴です。ここでは伝統的なベトナムの月餅とニューウェーブの月餅について紹介していきます。
その前に、ベトナムの月餅の基本的な内容に触れていきます。中秋節に食べる伝統的なお菓子で、1つ300グラム程度のものが多く、中国の月餅のようにそのまま食べることはありません。つまり、家族などでカットして食べることが多いお菓子なのです。
金額は、店舗によりますが1個10万ドン(約500円)となっており、経済発展が著しく所得も急激に増えているベトナムにあっても高額なお菓子として販売されます。また、お中元用のギフトタイプに至っては、一箱で100万ドン(5000円)以上する月餅もあり、ベトナムのお菓子の中では異彩を放っているのです。
このようにベトナムのお菓子の中でも特殊な位置づけがされたものが月餅と言えます。
伝統的なベトナムの月餅
伝統的なベトナムの月餅は、特徴として形状、フィリング、塩卵が挙げられます。形状は、中国と同様に丸型もありますが、四角のものも少なくありません。こういった形に差があるものの中国の月餅同様美しい模様の型で作った外観をしているのが特徴です。
パッケージもベトナム語表記が基本ではありますが、龍をあしらったり、漢字を多めに使っていたりしています。このことから中国の影響を色濃く受けているデザインと言えるのではないでしょうか。
フィリングは、中国風の餡や緑豆の餡、ゴマ、ナッツなど中国の月餅に使われるようなものが多いのですが、中国の月餅ではあまり用いられない豚肉などの塩味のある具を使われるケースも多くあります。そのため、日本でよく目にするような中国の月餅をイメージして食べたらとてもしょっぱくてびっくりするというケースも少なくありません。このように外見こそ中国の月餅に似ていてもベトナムのそれは、中身において大きく異なるのです。
塩卵は、ベトナムの月餅独特のものと言えます。これはアヒルの卵を使った黄身の塩漬け(trứng muối=塩卵)です。塩卵が入っていることこそベトナムの伝統的な月餅最大の特徴と言えます。
塩卵は甘いフィリング、塩味のあるフィリング関係なく、ほぼすべての伝統的な月餅に入っているのです。そのため、甘いフィリングの月餅を食べていたら、いきなり塩辛い卵が顔を出すというのがベトナムの月餅の特徴と言えます。ベトナムで月餅を食べる時は、この塩卵が入っていると意識して食べないとビックリすることが少なくありません。
ベトナム月餅のニューウェーブ
ベトナムにも国際化の波が入ってきていること、若者がそれらの文化に触れることが多くなったことから月餅を進化してきています。特に外国人などにはあまり評判のよくない塩卵を抜くという月餅が多く出てきており、これがニューウェーブとなっているのです。そんな新しい月餅の一例を紹介していきます。
洋風の月餅として、塩卵を入れず抹茶ティラミス味やブルーベリー&チーズ、コーヒー&アーモンドキャラメルなどのフィリングを入れたものがあります。また、同様にフランス植民地時代の影響を受けフランス菓子も発達したことから、プラリーヌ(ジャムやアーモンドをチョコレートやシロップでコーティーングしたフランス菓子)を月餅に見立てて販売しているものも人気です。さらに塩卵を満月と見立てて入れていた伝統的な月餅のコンセプトに倣い、卵を使ったプリンを月に見立てて月餅プリンという名前で販売しているところもあります。
いずれにしても共通しているのは、塩辛い塩卵をお菓子に入れていないこと、この塩卵を抜いて月餅として販売していることがベトナムの月餅の新しい風、ニューウェーブと言えるのです。ただ、これはハノイやホーチミンなどの都会の風潮であり、地方へ行けば今も中秋節になると塩卵の入った大きな月餅を家族で割って食べるというスタイルが続いています。
まとめ
アジア各地で行われているイベントが中秋節です。その中秋節で食べられる月餅は、中国を始めベトナムでも多く作られています。
そんなベトナムの月餅は、価格もやや高めでサイズが大きいものの外見上は中国のそれと極端には変わりません。しかし、どんなフィリングであっても必ず塩漬けの黄身、塩卵が入っているのが定番です。そういった伝統的な月餅に対して、近年この塩卵を抜いて洋風のお菓子にアレンジしたニューウェーブの月餅も都市部で増えてきています。
今後こういった塩卵を抜いた月餅が主流となった時、ベトナムの月餅は新たな姿となって日本や中国、韓国にやってくる可能性も否定できません。
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