現在ベトナムに進出している日系企業の数は 2,000社以上で、今後も増えていくことが予想されます。多くの日系企業がベトナムに進出していることからもわかるように、日本人が海外でビジネスを行うにあたり、ベトナムはおすすめの国の一つです。
本記事では日本人にとってベトナムのどのような点が、ビジネスを行う魅力なのかを解き明かしていきます。同時にベトナムでビジネスを行う時に気をつけなければならない点も探っていきます。
ベトナムでビジネスを成功させる秘訣や成功事例についてもいくつか触れていきます。海外、とくにアジアでビジネスの展開を考えているのであればぜひ本記事を参考にしていただき、ベトナムも候補の一つとしてラインナップしてみてください。
ベトナムでビジネスを行う魅力とは?
ベトナムは日本人がビジネスを行う上で魅力的な国の一つです。ではどのような点が魅力的なのか、その具体的な内容に迫ってみましょう。
物価が低く、人件費が安い
近年の経済成長を受けて、ベトナムの物価は上がりつつあります。しかしまだまだ物価は低く日本に比べて1/3〜1/5程度です。そしてビジネスを行う上でのベトナムの一番の魅力は、人件費の安さであると言えるでしょう。ベトナム人の大卒での新卒給料が月給4〜5万円くらい、アルバイトの時給が100円〜200円ほどですから、人件費は日本の1/5〜1/10ほどに抑えることができます。
ベトナムにはすでに多くの日本や韓国の製造業、繊維関係が進出し工場を持っています。また米中貿易摩擦や中国での人件費の高騰を受け、中国からベトナムへ工場などの移管が増加しており、ベトナムは人材の需要がさらに高まっています。しかしベトナムは人口約9,600万人で平均年齢が31歳。まだまだ元気な労働人口が潤沢にある国なのです。
親日的で日本への信頼が抜群に高い
ベトナムには現在多くの外資系の企業が進出しています。その中でも特に日本はベトナムで好意的に受け入れられる代表的な国の一つです。ベトナム人は非常に親日的であり、日本への信頼度が高いということがその理由です。
ではなぜベトナム人が親日的で日本への信頼度が高いのでしょうか。その理由として、歴史的背景、日本からの援助の大きさ、日本製品への信頼の高さがあげられます。
ベトナム人が日本へ抱く歴史的なイメージでは、日本はベトナムを長期に渡ったフランスの支配の開放を助け、独立を促した国であるという良いイメージが大きいのです。
また、日本はODAをはじめとしたベトナムへの最大の援助国です。さらにバイク大国であるベトナムにおいてホンダやヤマハは日本企業の代名詞であり、それ以外にも車、電化製品、化粧品などどの分野においても日本製品の品質の高さにおいて絶大の信頼があります。
ASEANの中でも圧倒的な経済成長率
ベトナムはASEAN諸国の中でも現在圧倒的な経済成長率を遂げています。2018年の実質GDP成長率は過去10年で最高の7.1%、今後も2030年くらいまでは高水準の成長を続けると考えられています。
ASEANの新興国の中でもまだまだ勢いのあるベトナムは、これからもビジネスチャンスの可能性が無限大です。
ビジネスで使えそうなベトナム語フレーズ
ベトナムでビジネスを行うにあたり、使えそうなベトナム語のフレーズをいくつかご紹介します。全ての会話をベトナム語でするのはなかなか厳しいかもしれませんが、最初に会った時の挨拶だけでもベトナム語で交わせると、相手にとって心象が良いですよね。
英語ではなくあえてベトナム語で話すと、ベトナム人はとても好意的に受け取ってくれます。
◾️Rất hân hạnh được gặp anh (chị). (ザット ハン ハイン デュオック ガップ アイン(チ)/ 初めまして
◾️ Tôi tên là ◯◯(トイ テン ラー ◯◯) / 私の名前は◯◯です。
◾️ Anh (chị) có khoẻ không?(アイン(チ) コー コーエ コン?) / お元気ですか?( How are you?)
◾️ Cảm ơn.(カームオン) / ありがとう。
◾️ Hẹn gặp lại.(ヘン ガップ ライ) / また会いましょう。
ベトナムでビジネスを行う注意点
上記のように日本人がビジネスを行う上で魅力がたっぷりのベトナムですが、ベトナムでビジネスを行うで知っておかなければならない注意点もあります。
具体的な内容をみていきましょう。
インフラが未整備
ベトナムはベトナム戦争の終結、そして市場経済を取り入れたドイモイ政策によって急速に経済発展を成し遂げ、その勢いがまだ続いています。しかしその急速な経済発展にまだインフラが追いついていないという側面もあります。
例えば公共交通は未だバスのみで、ハノイ、ホーチミンのメトロは工期が遅れています。人々の足はもっぱらバイクか車ですが、決して道路が整備されているわけではありません。交通ルールの徹底ももう少し時間がかかるでしょう。
電気に関しては都心部でも停電がしばしば起こり、水道は水道水を飲むことはできません。トイレは水洗になっているところは多いのですが、トイレットペーパーが流せない場所は都会でもたくさん存在しています。それだけまだ水道の設備が古いままなのです。
衛生面でも日本人の感覚からすると気になるところです。基本的に水道水は使えませんが、ベトナムのローカルレストランや定食屋さん、露店では野菜や食器類を洗うために使われているので、気が抜けません。ゴミに関しても処理が行き届いていない部分もあり、勢いのある経済成長とは裏腹に、インフラ諸々は未だ発展途上です。
逆に、ベトナムの経済発展と同時に存在していたインターネット、Wifiなどのシステムはどんな場所でもデフォルトで整備されています。この点は先に経済発展を遂げた日本よりも随分進んでいると言えるでしょう。
ベトナム人はまだまだ低所得
ベトナム労働総連盟の調査によれば、ベトナム人の平均年収は約30万円、平均月収は約27,000円(2018年時点)、1世帯の平均生活費は約36,000円となっています。ベトナム人は共働きが多いのですが、まだまだ可処分所得が少なく、自由に使えるお金がある人は少ないのが現状です。
しかし一方でベトナムでは外資企業の誘致や投資の推奨などにより、人々の給与も上がってきており、他のASEAN諸国に比べれば貧困率が急速に改善してきています。中間層が厚くなってきており、近い将来ベトナムの中間層が1/3程度になるとも言われています。
またベトナムの富裕層は、その物価と照らし合わせると信じられないほどの高額所得です。アメリカの調査会社の発表によれば、33億円5,000万円以上の資産を持っているベトナムの超富裕層の2012年から2017年までの平均増加率は12.7%に上り、世界第3位でした。しかも今後もこの増加率は伸び続けると考えられています。イギリスの調査会社のリサーチによれば、2018年のベトナムの超富裕層の人数は142人となっているそうです。
その下の層である資産約3億3500万~33億5000万円を保有しているベトナム人の富裕層は2018年の時点で12,000人ほど。両方を合わせても全国民の0.013%ほどの割合です。
急激に変わる政府の方針
市場経済を取り入れたりある程度自由度もあるベトナムの共産党一党体制は、政治的には安定しています。完全な自由経済ではないものの、WTOに加入後は政府の影響力も少し軽減されてはいるようです。
しかしやはり外資系企業や外国人に対する制度の変更や規制強化は急激にある日突然施行されることがあるため、注意が必要です。
ベトナム人の採用で気を付ける点とは?
ベトナムでビジネスをするとなると、ベトナム人を雇用する可能性も高くなるでしょう。同じアジアの仏教国とはいえ、言葉も習慣も文化も異なるベトナム人。ベトナムの国だけでなくベトナム人を理解し、寄り添わないとビジネスは上手くいかないと言われています。
ベトナム人を採用する時に気をつけるべき、ベトナム人の仕事に関連する特徴をご紹介します。
家族が最優先
ベトナム人が何よりも大切なのは家族です。それは自分の妻や子供だけでなく、両親や親族も含まれます。ベトナムには仏教のほか儒教の影響も色濃くあるためか、とくに両親を敬いとても大切にします。結婚後は夫側の両親とともに同居する家族が今なお多く、かつての日本の姿を見ているようです。
そんなベトナム人の優先順位の最上位は家族であり、仕事ではありません。仕事のために家族との時間を犠牲にするというような日本的な考え方は通じないでしょう。
家族を大切にするベトナム人。雇用する側もベトナム人に寄り添い、仕事でも家族のように付き合えば、ベトナム人も損得感情なしにお互い本当の家族のように助けてくれます。
離職率が高い
人材会社の調査によれば、ベトナム人の1年間の転職率は20%とも言われています。確かに「同僚のベトナム人が辞めてしまい、転職する」という話しは若手社員に限らず、マネージャー職に就いているような人まで頻繁に耳にする話しです。
外資系の企業がどんどん進出してきているベトナムでは、製造業やIT関係などの経験があったり語学ができたりすると引く手あまたなため、好条件を狙ってどんどん転職していきます。
もちろんお世話になった会社に恩義は感じていると思われるのですが、それよりも何よりもやはり家族のため、自分のために給与がよく条件の良い会社に行くことが優先されます。優秀なベトナム人には実際多くの会社から引き抜きのような形で声がかかってくるようです。
日経大手企業にのように安定した企業に勤めていても、もっと自分の手腕を発揮するためにより小さな会社で責任のある職に就きたい、というような希望で転職する人もいます。人に雇われず自分で何かやりたい、自分の店を持ちたいと考えるベトナム人はとても多くいるのです。
ベトナム人のプライドとは?
ベトナム人は真面目で勤勉であると言われています。確かに自分のスキルアップのために学校に行ったり家で勉強したりとなかなか熱心です。しかしどんな仕事でもやるかと言われればそうでもないようです。例えば自分の仕事と他の人の仕事の線引きはきっちりしており、自分の仕事が終わった後はサクッと帰ります。また、自分がやる意味のある納得のいく仕事でなければ、意欲的に仕事をしようとしないこともあります。
さらに実はプライドの高いベトナム人は、人前で注意されたり叱られたりすることを嫌います。日本的には叱咤激励の意味も込めてそのようなことを部下にしてしまうかもしれませんが、ベトナム人には逆効果です。ベトナム人のプライドを傷つけてしまい、さらにモチベーションを下げてしまいます。
日本人のベトナムでのビジネス成功事例
日本人がベトナムでビジネスを行なっている成功事例はどのようなものがあるのでしょうか。いくつか事例をあげていきます。
飲食店
ベトナムには2018年時点でハノイ、ホーチミン、ダナンなどの大都市を中心に日本人が22,000人以上在留しており、増加率は前年比28%アップとなりました。ハノイ、ホーチミンにはいわゆる日本人街と呼ばれる場所もあり、日本人向けの質の高い飲食店が軒を連ねています。
日本食だからといって特別に高額なわけではなく、日本と変わらないかあるいは少し安いくらいで日本と同じような食事ができる場所が、都市部ではたくさんあります。そしてそれは主に日本人がオーナーの飲食店のことが多いのです。
ベトナムに在住している日本人が日本の味を求めてそのような飲食店へ足を運ぶため、店はいつも賑わいを見せています。日本人に人気のある飲食店はベトナム人の富裕層などにも自然と広がり、いつも日本人とベトナム人が押し寄せています。
限られた食材で日本の味を再現したり、ベトナム人スタッフの教育には苦労しているようですが、日系のレストランでの成功事例は多数見られます。
美容系
同じく日本人が多く在留している地域には日系の美容院や、エステサロンが点在しています。駐在員本人だけでなく、その家族も駐在していることが多いため男性だけでなく女性や子供にも需要があります。
美容院はベトナムローカルや、西洋人のヘアスタイリストがサービスを提供していたりします。しかしベトナムローカルに行くのはかなり勇気がいることでしょうし、西洋人の髪質は日本人の髪質とは全く違います。やはり日本人に慣れている美容院に通いたいと思う人が多いでしょう。
またエステやスパもベトナムでは日本に比べて低料金でサービスを受けられますが、マッサージくらいならばともかくエステやレーザーフェイシャルなどになるといくら安くても直接肌に触れるものなので少し心配です。やはり安心の日系サロンにベトナムにいる間にも手軽に通いたいという女性ならではの需要があります。
飲食系と同じ流れになりますが、日本人が通っている優良サロンは値段が多少高くても質の良いサービスを受けたいという富裕層のベトナム人にも自然と人気が出てきます。
人材系
ベトナムでは英語や日本語、ベトナム語ができ、ベトナム人と日本人の架け橋になるベトナム人や日本人の需要がどんどん増えています。ベトナム人の現地採用やベトナムで働きたいという日本人と、優秀な人材を欲しがるベトナム在留企業とを繋ぐ人材紹介会社は非常にポテンシャルの高い産業です。人材を紹介するだけでなく、ベトナム人の教育や研修のサービスがあるエージェントもあります。
また、ベトナムの優秀な人材を日本に紹介するといった人材紹介業の成功事例もあります。ベトナム人にとって日本で働くことは憧れの対象です。近年技能実習生や特定技能ビザの制度で日本に来て研修を受けたり就労するベトナム人が急増しています。しかし必ずしも条件の良い、やりたい仕事とは限りません。特にIT系の優秀なベトナム人を正社員として日本へ受け入れることを前提としているエージェントは、成功事例の一つです。
ベトナムで人材を採用する時、右も左も分からないことが多いでしょう。ぜひベトナム人に精通している人材紹介会社を活用することをおすすめします。
まとめ
以上のように、これから海外でビジネスを行いたいと考えている日本人にとって、ベトナムは非常に魅力のある国です。その理由はまず経済成長の勢いと、物価の安さ、人件費の安さにあります。平均所得はまだまだ低いベトナムですが、貧困率は他のASEAN諸国に比べて改善されており、むしろ中間層が増えつつあります。
さらにすごいのがベトナムにいる超富裕層の人たちです。富裕層と合わせても割合はまだ少ないのですが、桁違いの資産を持っています。
ベトナム人は同じアジアの仏教国でありながら、働くことに対する考え方などに日本人とは違うモチベーションや思いがあります。そのため日本のやり方をそのまま押し付けても上手くいきません。ベトナムという国と人々の両方を理解し、その文化や習慣に寄り添って行く必要があります。
日本人のベトナムでのビジネスの成功例もたくさんあります。特にベトナムローカルではカバーできない日本の質の高いサービスは、ベトナム在留の日本人に需要があるだけでなく、ベトナム人の富裕層からも圧倒的な支持を得ています。
経済発展とともに多くの優秀な人材が必要なベトナムでは、人材系の会社も需要が高くベトナムに精通した人材紹介会社が多数存在しています。
なお、ベトナムでビジネスを始めるのであれば、ベトナムの経済や事情などに詳しいコンサルタントに相談することもぜひおすすめします。
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